almost...

分析と爆発のあいだ

藤井風から愛を手渡されました【RSR2022】

Vaundyに代打・藤井風。字面だけ見るとマジで意味わかんないんですけど、リアルタイムで目撃しても結局マジで意味わかりませんでした

 

目次

1. 踊り子(Vaundy cover)

「とぅるるる とぅるるる とぅるる...」
「とぅるるる とぅるるる とぅるる...」
「とぅるるる とぅるるる とぅるる...」
「とぅるるる とぅるるる とぅるる...」

「ねぇ どっかに置いてきたような...」

あれ...Vaundyさんコロナで出題辞退されたんじゃなかったんでしたっけ...??本人来ちゃってますけど......

ちゃんとVaundyが降臨してた。藤井風という声帯を通じて北海道に降り立ってた。歌い方とかそういう問題ではなく、いやまあ歌い方も寄せてるしかなり特徴とらえてるんだけどそれ以前に存在が紛れもなく "Vaundy" だった。いたんだよ、髪爆発した丸眼鏡のアイツが。

 

2-4. 恋風邪にのせて~napori~東京フラッシュ(Vaundy cover)

Vaundyの1stアルバム『Strobo』のジャンル説明見たことあります?

ジャンル:オルタナティブ/インディーズ、ポップ、Japanese Indie、Japanese Hip Hop/Rap、ヒップホップ/ラップ、J-POP

...ロック以外ほぼ全部書いてんじゃん。Googleさん絶対困惑してとりあえず全部書いただろと思って見てたんですが、まあ実際彼の音楽聞いて「ポップだ!」「オルタナだ!」となることはほとんどないわけで。聴けば聴くほどどう聴いていいのかわからなくなるカオス曲ばっかり揃えてるのがVaundyっていう天才なんですけど、藤井風の手にかかればそんなの関係ないっすわ。

ただいつもと明らかに違ったのは完全に "風化" (かぜ化)してはいなかったこと。いつもなら完全に咀嚼嚥下消化吸収した音を「藤井風」に再合成して体から放ってるわけですけど、今回は「Vaundy:藤井風=1:1」だった。敢えてVaundyの魂残してた。地球上のあらゆる曲を自らの血肉にすることができる藤井風がその能力を封印した.....

 

何てこと考えてたら2曲目始まってました。Vaundyが「酔」「融」「瞬」ていう漢字一文字を極限まで噛み砕いて歌にしたのがそれぞれ『恋風邪にのせて』『napori』『東京フラッシュ』だと思ってるんですけど、さらに藤井風が咀嚼して俺らに届けてくれてる。これもう令和の「口噛み酒」だろ。Vaundy「もしかして...」風「私達...」「「入れ替わってるー!?」」あれライブレポってこんな感じでよかったんでしたっけ

 

-MC-

「どーもー、Vaundyでーす。」(観客笑う)

「はい、いうてますけどmore、Vaundy改め藤井風と申します。ほんまはバウくんがここに立って、パフォーマンスをする予定で、こんなにね、たくさんの方が駆けつけてくれて......バウくんすごい。ありがとうみんなも。こんなに遅い時間に、しかもバウくんが今日来れないのに、こんなに集まってくれて、みなさんほんとにありがとうございます。そして、謎に配信されとんですけれどもこのライブ、配信で見よる人おるかな?こんにちは、ありがとうこんな遅い時間に。バウくんは...うわっ(バッタがマイクに飛んでくる)すげー!...おー跳んだ!...あの、そう...笑 バウくんはわしとデビューがすごい近くて、なんか共通点とかも結構あって、だからすごい勝手にお兄ちゃんのような気持ちでおらせてもらって、でもバウ君の声はほんとに唯一無二なんで、すごい緊張して歌詞とかもちょっと飛んだんですけど、でも精一杯リスペクトを込めてバウくんのカバーを最初やらせていただきました。で...(拍手)バウくんとデビューが似たような時期だったということで、まあね、申し訳ないですけど、僕のデビュー曲のほうもせっかくなのでさらっと聞いていただこうかなと思います」

限りなく謙虚に、かつオーディエンスを最大限満足させようとする圧倒的エンターテイナー。俺が風なら「おっしゃ代打で爪痕残してやるぜ」くらいの気持ちでゴリゴリに武装していくと思うんですけど、藤井風は圧倒的「素」。素麺くらい素。なんも身に着けてない丸腰。なのに最強。身体一つで全人類どころか空間まで従えてた。


5-6. 何なんw~ 帰ろう

「何なんw」は藤井風をよく知らない人でも勝手に脈拍早くなる魔物曲。分析しようとか批評しようとかそういう心意気が一気に行方不明になる。言葉にしようとするだけ無駄。なぜなら言葉にならない呻きとか喘ぎとか溜め息とかそういう「声なき声」の集合体だから。これは心で聴く「聖歌」

「帰ろう」キー-1下げも味がある。原キーは万人をやさしく諭す「帰ろう」だとすればキー下げは心の中で自分自身に問いかける「帰ろう」なんじゃないか、とふと思った

 

-MC-

「すいません、調子乗って自分の曲を2曲もやってしまったんですけれども、これからは、ほんまならRISING SUN FESTIVALに立つ予定だったのに、これまた流行りの病で立てなくなった方たちのカバーをすこしやりたいと思うんですけど。(拍手)」

「代打いうのももう一昨日くらいに決まったけん、昨日いざ練習したらぼっけぇ...めちゃくちゃ難しくてびっくりした曲をやるんですけどこれから。King Gnuさんの曲をやりたいと思います。『Vinyl』」

 

7-9. Vinyl(King Gnu cover)~祝日(カネコアヤノ cover)~オーケストラ(BiSH cover)

常田大希の世界を藤井風がピアノ一台と体ひとつでロックフェスで体現してる......情報量多すぎて脳が処理落ちする。常田が、勢喜が、新井が、井口がいた。「生King Gnu」だった。

もしかして今までのYouTubeライブでもカバーするたびにオリジナルに「寄せ」続けていたのか...?「藤井風」を演じながら同時にオリジナルへのリスペクトをあらゆるところに忍ばせていたのかお前...?「藤井風が藤井風としてステージ上に立っていること」に気を取られすぎて一番重要なとこに気づいていなかったのかもしれない......

「RISING SUNに立つ予定だったのに立てなかった方シリーズ...コロナメドレーということでなら、カネコアヤノさんの曲を。これもリスペクトするシンガーの方で、すごいどれをやろうか迷ったんですけど...(弾き始める)『祝日』。」

とはじまったカネコアヤノ『祝日』。この日一番のパフォーマンを決めるなら間違いなくここ。どこか投げやりだけど愛に満ちたカネコアヤノが藤井風と重なる。「あとは抱き合って確かめて」で体内の老廃物全部出た。そして「コロナメドレー」は最終盤に。

「じゃあ、最後...今日立つ予定だったBiSHさんの『オーケストラ』」

BiSHの『オーケストラ』。息継ぎがBiSHしてた。7人目のメンバー「フジイカゼカンパニー」。本当に踊りながら歌っているみたいだった。如くピアノで会場を満たす方法は世界で彼が一番よく知っている。"楽器を持たないパンクバンド" が、"ピアノ" が、"オーケストラ" が、ライジングを隅まで満たした

 

10. きらり

ファルセットが出なかったとか、高音を外したとか関係ない、今までで一番最高な『きらり』だった。出られなかったアーティストだけじゃない、いろんな人の思いを乗せながらこのステージに立っているのが分かった。自分の存在が邦楽に影響を少なからず与えていること、たくさんの人を支えていることを自覚してるんだろうなあと思ったし、背負うものは重いなあと。でもそれを力とか愛に変えてしまうのが彼であり、彼の歌なんだよな。

 

-MC-

「最後の曲となってしまいました。なんかほんまに人生いろいろあるけど、昨日よりも今日、すこしでもいい人間であろうとか、少しでも優しい人であろうとか、努力一応しながら僕は生きてます。全然すっごい失敗することもあるし、今日めっちゃ最悪やったみたいな日もあるんですけど、それでも少しでもいい人間であろうと努力すること、姿勢そのものだけで十分なのかなと思うんで。みんないい人間になって、幸せになることを諦めんでほしいし、これからも、ほんまに今いろいろあると思うけど、ぼちぼちお互い頑張りましょうや、そういうような曲をやってお別れにしたいと思います。『旅路』という曲です」

 

11. 旅路

最後に『旅路』聴くとライブがきれいに収まるんだよな。安らかな気持ちで一日の終わりを迎えられるというか。全世界のアーティストはライブの最後に『旅路』やったらいいと思う。ミスチルがinnocent world→Tomorrow never knowsからの旅路演ったら全世界平和になるよこれ。

「いろんな愛を受け取って、みんなに返すだろう」今日の藤井風はこれをまさに体現していた。これまでめちゃくちゃに愛されてきたからこそなんだろうとは思うけれど、今夜は完全に「愛を与える側」だった。出演できなかったアーティストを含めて会場全体に愛を手渡しで配って歩いてた。

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〜Encore〜

EN1. まつり

「ごめん最後の曲じゃ言ったんじゃけど、もう一曲だけどうしても......(拍手)ありがとう。みんなと踊りたい曲があります。今日一応お盆やねんな、お盆やから...じゃから、なに、すごい簡単な振りなんでみんなよかったら、(踊って見せる)こういうやつなんですけど...うわ、なんでそんなにすぐできるん?(観客笑う)すばらすぃ、ありがとう。シュール映像やなこれほんま。シュール映像が撮りたいので、みなさんぜひ一緒にやりましょう。ほんまにありがとう、すばらすぃ。サビになったらこれをひたすらやって、で、サビの後半に、(踊って見せる)あちょ、これ難しいか、どうしよ...(節をつけて踊って見せる)これはまあできる人はやってください、ありがとう。じゃあ...聞いてください。『まつり』」

「カラオケ!」

石狩湾が一気に盆踊り会場になった。櫓に藤井風が立ってる。纏う赤いジャケットはさしずめ灯篭を反射した浴衣のように見える。リミッター解放した藤井風の全世界を巻き込んだ盆踊り大会、この世界で最強レベルの夏祭りやってて草。いや風。

この世を去った人たちだけではなく、RISING SUNに出演できなかったアーティストの無念を静かに、時に激しく夜空に放った。間違いなくそこにVaundyがいたし、King Gnuが、カネコアヤノが、BiSHがいた。

風とピアノが、光に包まれていた。

「こんな急遽な担当をあたたかく受け入れてくれて本当に皆さんありがとうございます。ほんま、免疫力つけて...元気でおることが一番の免疫力だとわし気づいた...わしもコロナになって...こんな話はどうでもええ...元気がなにより大事、元気でおることが何よりの免疫力なので、皆さんどうかstay positive, stay happy, stay healthyでお願いします、藤井風でしたほんまにありがとうございました!」

 

まとめ

別に「藤井風です」で出てきてオリジナル曲6,7曲やってオーディエンスをガチで圧倒することもできたはずなんですよ。だけどそれをせずに敢えて「カバー」をメインに組み立てることを選択した。しかも代打が本番2日前に決まって、その場でそういう判断しちゃうのは「藤井風に音楽の女神が微笑んだ」とかじゃなくてもう藤井風が神なんだと思う。

YouTubeでカバーずっとやってきた原点と、今の「藤井風」が共存する世界線。出演がかなわなかった他アーティストへの無限のリスペクトに感情持ってかれた。

 

セットリスト

1. 踊り子(Vaundy cover)
2. 恋風邪にのせて (Vaundy cover)
3. napori (Vaundy cover)
4. 東京フラッシュ(Vaundy cover)
-MC-
5. 何なんw
6. 帰ろう
-MC-
7. Vinyl(King Gnu cover)
8. 祝日(カネコアヤノ cover)
9. オーケストラ(BiSH cover)
10. きらり
-MC-
11. 旅路
〜Encore〜
EN1. まつり

 

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