【永久保存版】藤井風のカバー動画大全・第3回:#23~34 高校卒業~「歌う人」になるまで
藤井風が今までにアップした全99本のカバー動画すべてにコメントをつけつつ、風の成長の軌跡とともにふりかえっていく企画。
【永久保存版】藤井風のカバー動画大全
第1-2回:#1~22 12歳で初投稿~中学卒業まで
第1回:#1~11 ①
第2回:#12~22 ②
第3回:#23~34 高校卒業~「歌う人」になるまで← イマココ
第4-6回:#35~84動画投稿がペースアップ
第4回:#35~52 ①
第5回:#53~69 ②
第6回:#70~84 ③
第7回:#85~99 上京、そしてメジャーデビュー/総括
今日は 第3回 #23~34 高校卒業~「歌う人」になるまでです。それではどうぞ。
前回記事はこちら(第2回)。
--------
目次
- #23 2017/1/27 星野源・恋 耳コピ ピアノ
- #24 2017/1/29 椎名林檎 - 長く短い祭り 耳コピ
- #25 2017/1/31 Suchmos "STAY TUNE" 耳コピ ピアノ カバー
- #26 2017/2/2 平井堅 - 楽園 Piano Version
- #27 2017/2/3 back number - 「ハッピーエンド」
- #28 2017/2/12 スキマスイッチ - 奏(かなで) ピアノ
- #29 2017/2/12 丸の内サディスティック (弾き逃げ)
- #30 2017/2/17 宇多田ヒカル 初期の代表曲ピアノメドレー4曲
- #31 2017/3/1 3月9日 レミオメロン
- #32 2017/8/13 Jamiroqual - Virtual Insanity ( Piano cover )
- #33 2017/8/18 最後の雨 中西保志
- #34 2017/8/20 エイリアンズ (キリンジ) ピアノ
- 第3回まとめ
#23 2017/1/27 星野源・恋 耳コピ ピアノ
恋 / 星野源
鍵盤の上で指が恋ダンス踊ってる...すげえ...
ストリングスのグリッサンドもギターの細かい動きも音程を上げていく二胡も全部鍵盤の上で再現されている。圧巻は間奏。16分音符を余裕の表情で難なく弾き切る。動きのあるベースも左手で軽々と再現。もはや藤井風ならぬ「藤井指」。この凄さは後ほど詳しく......
原曲ギターは東京事変の "浮雲" として有名な長岡亮介が弾いている。そのギターフレーズを、「浮雲み」を存分に残しながらピアノに翻訳。音の伝道師。天才通訳者。
間奏なのだが......ピアノで弾きやすいようにすこし弾き方を変えているのがミソ。原曲もいいけど、こっちも気持ちイイ......貼っておくので聞き比べ倒してください......ぜひ。
原曲 ↓
藤井風 ↓
長岡亮介本人がこのカバー聴いたら絶対ニッコニコだろうな。無理やりにでも聴かせたい。
#24 2017/1/29 椎名林檎 - 長く短い祭り 耳コピ
長く短い祭 / 椎名林檎
俺的ベストカバーベスト10を挙げるなら確実に入ってくるね。初っ端からもう最高。鍵盤を舐めまわすような弾きっぷり。亀田誠二のベースが縦横無尽すぎて「ネック掃除」などと形容されるのならば、藤井風のピアノは「鍵盤掃除」だな?
「かわいい」から「かっこいい」に明確にフォルムチェンジしておる......超高校級、えげつなすぎてちょっと引いてる。俺の高校生活はなんだったのか。定期的に絶望を与えてくるから許せない。たぶん何度生まれ変わりガチャしてもこうはなれない気がする。そもそも何度も生まれ変わるのは嫌だな。インドア系すぎて三回目くらいから母体の中が心地よすぎて出てきたくなくなってそう。
そしてリズムへのノり方が明らかに変化している。自分で作り出したグルーヴに自らノってめちゃくちゃ楽しんでる。超「自作自演」。この言葉をいい意味で使う日が来るとは思わなんだ。
#25 2017/1/31 Suchmos "STAY TUNE" 耳コピ ピアノ カバー
STAY TUNE / Suchmos
狂ってる。いい意味で。聴いてるこっちまで狂いそうになる。てか狂ってなかったら藤井風の動画で8000字超えのレビュー書いてない。なにせ甘美すぎる。あんな泥臭ソングをここまで甘く弾き上げられるピアニストは彼しかいない。もはや違う曲。どのくらい違うかといったら納豆と甘納豆くらい違う。「甘」がついただけであんなにおいしい食べ物になるとは思わんやん。てか動画始まる前から弾いてるやん。フライング乙。ごちそうさまです。
Honda VEZELのCM曲をカバーした4年後にVEZELのCM曲「きらり」を書きおろすという奇跡の巡り合わせ。カルマですこれは。いま彼以上に " GOOD GROOVE " を体現できるアーティストはいない。HONDA担当者様の方向に向かって毎日3回礼拝したい。
#26 2017/2/2 平井堅 - 楽園 Piano Version
楽園 / 平井堅
「和製・平井堅」爆誕。まあ平井堅もよくインド人に間違えられるだけで純日本人なんですけど。
それと誰か気付いている人います?「楽園」のMV、実は「何なんw」のそれとそっくりなことに。平井堅は追いかける側、藤井風は追いかけられる側という違いこそあれど、本人は黒の服を着て、もう一人が白を纏う構図。
意識の中だけにある人格が、どんな形であれどその主を救おうとするストーリがちょうどパラレルで面白い。 ちょっと運命感じてYes, let me fly言うてますけどmore......
#27 2017/2/3 back number - 「ハッピーエンド」
ハッピーエンド / back number
youtu.be《大丈夫 大丈夫ゥゥゥゥゥゥウウウウウ》の「ゥゥゥゥゥゥウウウウウ」でゆっくり全音上がっていくとこ、どうやって表現するのかなと思っていたらトゥリルですか。やられました。清水依与吏の表現の引き出し全部開け放ってる。
昔から原曲のラスサビ(3:49~ ↓ ) Ba. 小島和也のベースラインエロすぎて大好き。
ほかの同じフレーズの箇所は「レーレーレーレーレーレーレーレーレーレーレーレーレーレーレーレー」って冷静に弾いてるのにここだけ「レーレーレーレーレーレーレーレ~⇧⇧⇧レ-レ-レ レ-レ-レ レ-レ-レーレミレ~」。感情爆発してる。キラーフレーズ。殺される。てか小島和也にベースで殴られて死んでもいい。ここだけテープ焼き切れるくらい聴いてる。これ聴いたことない人はベースライン意識して100回聴いてほしい。
ということで藤井風のカバーではどうなっているか聴き比べたら特に一番のサビと弾き方変えてませんでした。右手を主旋律に取られるから、左手のベースラインは重く弾かないといけない制約の上でやってるので仕方がない。今度は歌付きベース大強化版再録超絶希望。
#28 2017/2/12 スキマスイッチ - 奏(かなで) ピアノ
奏 / スキマスイッチ
藤井風のオリジナル曲はいい意味でリスナーを裏切って快感を与える、「素直じゃない」曲が多いから、ファンモンのような素直な曲を弾き語りしている映像は貴重かもしれない。彼が椎名林檎的な(と言って伝わるだろうか、ディミニッシュ・オーギュメント・9th・11th・13th・分数コードなどなど多用した)歪んだ音楽を作り出すこともできるからこそ、コード進行が単純な曲を弾いても出る深みがある。
こんなことを第2回で書いたが、そのまんま同じことをこのカバーでも主張したい。右手は主旋律、左手はベースラインとコード。これだけで深みを出せるミュージシャンがほかに何人いるだろうか。歌詞がそのまま包含されているような演奏、ダイナミズムのつけ方、省く音・残す音の選び方、響かせ方、ここまでくるともう技術云々の話ではない。音楽への愛がそうさせているとしか思えないような演奏。正直、絶望以外の選択肢が与えられない。
#29 2017/2/12 丸の内サディスティック (弾き逃げ)
丸の内サディスティック / 椎名林檎
これまで一切カバーしていなかった椎名林檎、高校入学後から大量にカバーするまでに何があったのか知りたくもあり知るのが怖くもある。
10回目くらいで打鍵の音が気にならなくなった。むしろ超エコな必須打楽器。指のエネルギー再利用。痛みが気持ちよさに変わるあの瞬間に酷似したサディズム的快楽を味わってしまった。
この1年と2か月後にOn vocal版を公開。そしてさらにワンマンライブ “NAN-NAN SHOW 2020” では4曲目に超洗練された丸サをぶち込んできた。藤井風の変遷を椎名林檎の名曲によって体感できる贅沢でハイになってトリップした
#30 2017/2/17 宇多田ヒカル 初期の代表曲ピアノメドレー4曲
正直めちゃくちゃ興奮してる。令和のR&Bスターが平成のR&Bスターをカバーしている。それを無料でのぞき見できる時代になったのがうれしくてたまらない。サンキュージョブズ。
Automatic / 宇多田ヒカル
やっぱりいつでもピアノに打楽器の魂を吹き込む神。イントロ、バスドラのリズムでベース音弾いてるのでよく聴いてみてほしい。と思いきやBメロは自分で左手のリズムを変えてる。まるで完璧に計算されているかのような快感を本能で作り出す才能が妬ましい。
あとは、緩急の付け方と表情。力を込める・抜くの塩梅が絶妙。力を入れるところでは顔が引き締まる。抜くところでは白い歯を見せニカっと笑う。曲の緩急も風の表情も俺を翻弄してくる。絶対俺のこと狙ってると錯覚せざるを得ない。こんなに思わせぶりな態度とっといて「いまは恋愛に興味ない」とか言わないでよね////
そして"It's automatic"の口パク、萌え。
Can You Keep A Secret? / 宇多田ヒカル
原曲の振れ幅を50倍くらいにしたような演奏。雰囲気としては『会いたくて会いたくて』のカバー(←第1回 #4)に近い気がする。リズム隊が"軽め"なポップを「"風"化」してピアノ一台で出せる音全部出してる
近づきたいよ君の理想に~おとなしくなれない~Can you keep a secret?........\\\ダーン///Hit it off like this......この \\\ダーン/// に大事なもの全部含まれてる。一気にムード持っていく。グランドピアノでビンタされてる感覚。
traveling / 宇多田ヒカル
" Can You Keep A Secret? " から流れるように " traveling " に移っていく。ここの移行部最高だな?曲が変わったのに気付かないくらいナチュラルに移ろっていく。この動画は組曲「Hikaru Utada」だ。すべてが同じ流れ、一本の道の上にある。この動画全体が一つの曲として完成されている。
そしてまた"traveling"の口パク。さっきより頻度多めで嬉しい(?)
光 / 宇多田ヒカル
4曲目にもなると語彙力がなくなってくる。「すごい」「天才」「色気がある」「才能の塊」「セクシー」「ピアノが歌ってる」「音楽の神に愛された男」「技術だけでは到達できない領域」......ここら辺の表現全部使い果たした。「ヤバい」を使い始めた平成JKの気持ちがこんなにもわかるときが来るとは思わなかった。そろそろ"カゼい"(風い)とか"Kazestic"(カゼスティック)とか"風ってる"(かぜってる)とか"草超えて風"とか新語を作らないと藤井風の魅力を堪能する前に全日本人のボキャブラリーが焼き尽くされてしまう。
追記:荒々しい暗転好き。 このライブでの暗転の仕方が全く一緒なので、これを参考にしたんだと思う。
......最後、ビデオ止めるときのカチャカチャカチャって音すき......風ASMR......
#31 2017/3/1 3月9日 レミオメロン
3月9日 / レミオロメン
えっドラマのワンシーンか何かですか......窓から差し込むオレンジ色の夕日と時々聴こえる犬の鳴き声とテキトーに結んだネクタイと雑に捲ったYシャツと全くこちらに合わせない目線と敢えて真ん中を外すポジショニングのせいで完全に脳内ドラマ化された。タイトルは「ヤクザにラブソングを」「チンピラペダル」「狂い弾きウィンドロード」のどれかでお願いしたい。
魂だけはずっと高校生のままで彷徨っていたのに、19歳の藤井風から手書きの「卒業おめでとう」で祝われて何かから強制的に卒業させられた
......ん......?レミオ...メロン?メ...ロ...ン......?
キャッチ・マイ・ハーーーート.......
#32 2017/8/13 Jamiroqual - Virtual Insanity ( Piano cover )
Virtual Insanity / Jamiroqual
我々がピアノで弾く想像すらできないような曲を、藤井風はいとも簡単に弾ききってしまう。曲を聴いた瞬間に彼の頭ではピアノでカバーしたときの完成像が浮かんでるような気がする。右手は主旋律をとって、余った指で和音を弾く。左手はリズムをとって、コードのルート音、余った指で構成音を弾く。この作業を高い精度でこなし、かつグルーヴィーに仕上げるところまで慣れた手つきでやってしまうのが悔しい。プラスして、序盤で帽子を落としても画になるオシャレさと、0:25と0:33で手を払う謎のしぐさも色っぽく見せてしまうセックスシンボル的素質とを持ち合わせているから、見ている男としては気が狂いそうになる。「投げてもよし、打ってもよし、走っても守ってもよし、話してもよし、顔もよし、ファンサもよし」な大谷翔平の弱点を野球ファンが必死に探すのと同じように、藤井風の欠点を探すしか残された道がない。
「藤井風 欠点 検索」............
「「「「足が臭い」」」」
いや、「歌が上手い」「顔が良い」「オシャレ」「エロい」「無尽蔵の優しさ」のコンボが「足が臭い」だけで打ち消せるわけないだろ。100歩譲って寝起きのロッチ中岡のベロくらい臭かったら若干健闘するくらいのレベル。
......許せ中岡。こんなしょうもない比較のために引っ張り出してすまんかった。
#33 2017/8/18 最後の雨 中西保志
最後の雨 / 中西保志
――私たち、別れた方がいいと思うの。
「あなたを愛しているし、あなたも私を愛してくれたけど、いつの日からかすれ違ってるって感じるようになったの。愛が憎しみにとって代わられる前に、お別れした方がいい。私もあなたを失いたくなかった。でも仕方がないの。そうじゃないと、あなたのこと、永遠に嫌いになってしまいそう。ねえ、わかって。わかってよ。」
まくし立てる私に、風は何も言わずピアノの蓋を開けた。
「ねえ、なんでいつもそうやって逃げようとするの。いつもそうだった。私がこんなに一生懸命話してるのにあなたは無言で音楽にすがって。弱い人間なのよ。」
それでも風は何も言わず、鍵盤を叩き始める。中西保志の「最後の雨」。二人でよく聴いていたラジオでいつも流れていた、大好きな曲。
《本気で忘れるくらいなら 泣けるほど愛したりしない》
彼の瞳からは涙がつたっていた。最後のサビに入ろうかという前、笑顔でこちらを向いた彼と目が合う。「じゃあな、元気でいろよ」そんな言葉が聴こえたような気がする。私はこらえられず走り出した。彼はまだピアノを弾いている。遠くからメロディーが聴こえる。もう戻らない、戻れない。
彼は白い歯を少し見せたあと、最後の雨に打たれ続けた――
一度でいいから、こんな男に愛されてみたい。できれば藤井風がいいが。
#34 2017/8/20 エイリアンズ (キリンジ) ピアノ
エイリアンズ / キリンジ
弾き方といい、音色といい、藤井風のカバー動画の中で原曲にいちばん忠実かもしれない。2:24~、おなじみの「ミ♭シ♭ソ♭ミ♭レ♭ドシ~」の弾き方好き。指を置きにいかず跳ねるように鍵盤を叩いてキリンジの「あの感じ」を演出する匠。指先にすべての神経が集まってるんじゃないかってくらい感覚が鋭い。繊細かつ大胆。脳天から指先までエロス。恋心と性愛を司る神。一度でいいから抱いてくれないか
第3回まとめ
今回は切ない曲が多かったイメージ。この記事を書きながら何回か泣きかけた。ワクチンの副反応と戦いながら執筆したしんどさもあったけども。一番涙腺に来たのは「最後の雨」の妄想シチュエーション。自分で作ったストーリーで感動して泣くという自家発電をしつつ、しまいには「そんな大恋愛したことねぇわ!」と架空のプロットに嫉妬し始めるというカオス。
そろそろ「歌う藤井風」が見たくなってきたころでしょう。いよいよです。次回は「第4回:#35~52 : 動画投稿がペースアップ①」です。お楽しみに。ようやく「歌手・藤井風」について語れると思うとワクワクが止まらん。